三大治療法

バセドウ病のような甲状腺機能が亢進してしまった場合の治療方法は、大きく分けて3つある(3つだけぇ?)

  • 抗甲状腺薬の服用(プロピルチオウラシル、チアマゾール)
  • アイソトープ治療(放射性ヨード)
  • 外科手術(甲状腺の摘出)
・・・
抗甲状腺薬の服用

プロピルチオウラシル

まず、日本人に一番ウケるのがこの治療法。これは文字通り薬だけで甲状腺機能を治そうというもの。使われる薬剤はプロピルチオウラシルチアマゾール。どちらも甲状腺ホルモンの生成をジャマしてホルモンを作らせないようにする薬だ。これらの薬はこれから作られようとするホルモンの生成をブロックするだけで、既に作られ甲状腺内に貯蔵されているホルモンに関しては効果なし。一般的に甲状腺内には約6週間分の甲状腺ホルモンが貯蔵されていると言われているから、これらの薬を飲んで体調が改善してくるのは、大体6週間後という事になる(もちろん、もっと早い人も遅い人もいる)。

抗甲状腺薬を服用する期間は残念ながら長い。ほとんど年単位で服用し続ける事にある。不思議な事に、薬の服用により甲状腺ホルモンレベルが正常に保たれた後、自然と体の制御に従うようになりホルモン濃度も正常に保たれる事がある(全体のおよそ50%の患者で)。このように幸運にも甲状腺が言う事を聞いてくれた場合は、これで治療はおしまいと言う事になる(それでも爆弾を抱えている事には代わりは無いので最低でも年に一度の検診が必要)。

抗甲状腺薬を1年以上服用しても症状が改善しない、或いは改善しても止めたら再発しちゃった、などと言う不幸な場合には、抗甲状腺薬をこれ以上投与しても改善は難しい、と判断されるのが一般的らしい。こういう場合は、アイソトープ治療か手術に切り替える必要がある。今までの苦労は何だったんだ?って感じである。

・・・
アイソトープ治療

アイソトープ治療(radioactive isotope = 放射性同位体)は、放射線を帯びたヨード(radioactive iodine)を服用し甲状腺を被爆させて破壊しちゃおうという、考えたヤツの顔が見たくなるような荒手の治療法。ちょうど誘導核ミサイルで患部を狙い撃ちするイメージだ。人体の臓器の中で、ヨードを必要とする臓器は甲状腺だけ。この性質を利用してヨードに放射線を浴びせた「放射性ヨード」を飲んで、甲状腺に取り込ませる。すると放射性ヨードは甲状腺内でベータ線を放射する。ベータ線は1ミリないし2ミリしか届かない為、他の臓器には影響を及ぼさない。ちなみに勘違いしてはいけないのは、本当は甲状腺は悪くない、ということ。悪いのは自己免疫なのだが、残念ながらそこを治す術は現時点で無い。仕方が無いので、「自己免疫異常→甲状腺への攻撃→バセドウ病」という公式の中から「甲状腺」という要素を取り去ってしまおうという、何とも涙が出そうで虚しい治療法がこのアイソトープ治療なのであーる。

甲状腺が放射線により被曝すると、ホルモンの生成能力が奪われるので亢進症の症状はなくなる。しかしアイソトープ治療への道を選んだのなら、割り切りが必要だ。と、言うのもアイソトープの量を決めるのが大変なのだ。多すぎると甲状腺の機能の全てが失われ「甲状腺機能低下症(橋本病)」という状態になってしまう。かと言って少なすぎれば亢進症は治らない。

日本では、医師がこだわりを持って適量の放射性ヨードで治療しようとする。しかし合理主義の欧米(特にアメリカ人)では、最初から甲状腺の息を止めるべく大量の放射性ヨードを服用させる。この場合、甲状腺がホルモンを生成する能力が無くなってしまう為に、毎日1錠甲状腺ホルモン剤(thyroxine)を飲む必要がある。日本人の感覚から行くと「一生薬を飲み続けるなんて・・・」アメリカ人の感覚からすれば「薬飲めばいいんだろ?食事と思えばいいじゃん。」と、何とも合理的なのだ。

治療スタイルに関しては、私は完全に欧米的な価値観を持っている。日本では手術にしてもアイソトープ治療にしても、一生薬服用という事に抵抗がある為に「適量」を摘出ないし破壊しようとする。しかしたいてい失敗するばかりか、ずっと爆弾を抱える事になるのでいつ再発するかハラハラしながら生活しなければならない。事実、私の母は若い頃手術で「適量」を摘出しその後は何事もなかったかのように生活できたが、37年後に再発してしまって、再度摘出手術を行っている。欧米のように手術なら最初から全摘、アイソトープなら最初から致死量のアイソトープをもってひと思いにヤル、選択できる人はこれを選択するのが一番!ま、どっちを選ぼうが患者の自由だけどね(へらっ)しかし「適量」を見定めるのが医者の力量だと思ってる先生方も多いので、その辺は患者がありとあらゆる情報を調査して自分で決めるのが一番重要だと私は思いますね。

話が逸れましたが、アイソトープ治療は、安全性が実証されています(キッパリ)。癌になる確立も高くならないし、将来の妊娠にも影響しない。機能低下症になる事さえ受け容れてしまえば、安全で確実で良い治療法なのだ。

ただ、この治療を受けてから2週間くらいは、他人と同じトイレを使わない方が良い。何故なら放射性ヨードはほとんどが甲状腺に取り込まれるが、そうじゃないもの、或いは甲状腺から廃棄されたものは尿として排泄されるからだ。特に妊婦やこれから妊娠する人との共用は止めた方が良い。

ところで、甲状腺の病気の診断(検査)にも微量の放射性ヨードが使われる。私も使ったが「放射能を気軽に飲む」のは、気持ち的には全然「気楽」じゃない。何しろ医者は鉛の箱から「うえぇぇ〜〜」って出すもんだから余計だ。

・・・

外科手術

これは文字通り、甲状腺を外科的に取り除いてしまおうと言う治療法。効き目テキメンだしすぐに効果があらわれる。ただ、手術だという心理的なプレッシャーや、声帯に近い為にキズをつけると声が失われる、などの危険性が伴う。執刀医の技量も影響する。入院も必要。私はできる事なら手術は避けたい・・・。

・・・
甲状腺の治療方法には以上の3つがあるが、どれを選択するかは、その人の状態と本人の希望、そして医師の考えが加味されて決定される。最適な治療法は、人によって違う。私の場合は、重症と言うことで直ちにアイソトープ治療をする事はできず、抗甲状腺薬の1年半に渡る服用の後にアイソトープ治療でバセドウ病を乗り越えた。

(C) 2000-2002 thyroid.tarosworld.com