Nikon EM
Nikon EM は 1980 年に、Nikon F3 と当時に発売された「リトルニコン」と呼ばれた小さな一眼レフ。ニコンの一眼レフと言えば大きい、重い、高いと三拍子揃っていたのですが、このニコンはそんなお堅いイメージを打破しようと試みた、ニコンの戦略商品でありました。
このカメラ、どちらかと言えば日本市場よりも欧米市場を睨んだ商品で、日本での発売は米国よりも数年遅れていました。アメリカ人は日本人よりも実用一点張りで、材質や質感などあまり気にしない人達なので、ニコンは
Nikon EM に必要最小限の機能しか付けず、また材質も今までの金属を見合わせニコンとしては初めてプラスチックを採用しました。また、このカメラのデザインは何とあのジュージアーロの手による物で、「リトルF3」という雰囲気は非常にキュートです。私は所有していませんが、MD-E
というモータードライブも F3 の MD-4 と同様、前面に傾斜したデザインで、カメラと一体感があります。
機能を必要最小限にしたモデルなので、シャッターダイアルはありません。その変わり、絞り優先
AE の他に、バルブ、そして機械式の 1/90 秒シャッターが付いています。これは兄貴分の Nikon F3 の緊急作動レバーと機能が似ていて、非常にマニアックな機能です。また、セルフタイマーを作動させると自動的にミラーアップされるので、天体望遠鏡に取り付けると非常に好都合です。Nikon
F3 などはいちいちミラーアップレバーを上げないといけないのですが、このレバーを操作すると構図がずれる場合があるので、EM
の自動ミラーアップ機能はキラリと光ります。また、手ブレの恐れがあるシャッタースピードになると電子音で警告してくれたりもします。オマケに小刻み巻き上げまでできたりします。そうそう、逆光時の露出補正ボタン(+2EV)も付いています。かなり機能は削られた機種ですが、このように基本的な機能には全く手抜きを感じさせない作りは、さすがはニコンの黄金時代に生まれたカメラです。
ところで、Nikon EM には色々なバージョンがあるようです。細かい事は良く知らないのですが、最も目立つ違いでは日本国内モデルと海外モデルの違いでしょう。まず、日本国内モデルは露出補正ボタンに銀メッキが施されていますが、海外モデルは青ボタンです。また、私の持っている青ボタンモデルに張られている革と日本国内モデルの革の材質が違います。青ボタンモデルの革は、いかにも革という感じのものです。一方、日本国内モデルの革はその他のニコン一眼レフで使われていた革と同様のものです。日本国内モデル、海外モデルの分かる範囲の違いはそのくらいなのですが、その他に巻き上げレバーの形状の若干の違いや、レバーの裏に刻印してある番号の違いなど細かいバージョンが存在するようです。しかし、旗艦モデルでは無い為、詳しいコレクターがあまりいないようで情報があまりありません。
また、Nikon EM 用に Nikon Series E というレンズラインナップも発売されました。これらのレンズは一般的な
Nikkor シリーズとは違い、レンズの枚数、コーティング、材質などでコストダウンが計られています。中には日本国内では発売されなかったものもあるようです。しかしそこはニコン、写りは一級品です。
Nikon EM は素のバニラアイスのようなカメラ。目に見える部分でコストダウンを計りはしたが、目に見えない部分では妥協していない、ニコンという企業の本質が見えるカメラだと思います。